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まず、ペットの世話や手入れに関する用語として、
トリミングとグルーミングという言葉が流通しています。

 

どうもこの言葉の定義が、解説本や飼い主によって若干異なり、
区別なく使われている現実もあります。

 

 

基本的な意味として、グルーミングはまさに犬に対して飼い主が日常的に施すべき「お手入れ」で、
目、爪、歯、毛、皮膚など犬の身体の見えるところ全般を対象にした手入れをいい、
そのためのチェックなども求められる言葉です。

 

 

一方、トリミングはもともとは毛を対象としたもので、ハサミ、バリカンなどで犬の毛をセット、スタイリングすることを指します。

 

グルーミングよりも、トリミングという言葉の方が、一般化したために、
トリミングを犬に対する手入れの総称として使う傾向もありますが、
むしろトリミングはグルーミングに含まれる概念と考えてよいでしょう。

 

トリミングをグルーミングとして説明しているものがあるのは、そのためです。

 

 

ここでは、もともとの意味である犬の毛のお世話としての、トリミングについて話を進めていきます。

結論から言うと、トリミングには、大きく「おしゃれ」と「健康管理」の、二つの役割があります。

 

前記したような飼い主の愛犬を可愛くするためとか、
その上に立っての飼い主の意向としての不要論は決定的に後者の犬の健康面の必要性を無視する考え方に立っていることになってしまいます。

 

その犬の健康に関わるトリミングのメリットとしては、

 

　1　清潔の保持
　2　病気などの健康状態の異常の早期発見
　3　犬の精神衛生上の効果
などか挙げられます。

 

自然界の多くの動物は、自分あるいは自分たち仲間同士で身づくろい、
毛づくろいを行う習性を持っており、それにより健康な生活を彼らなりに維持しています。

 

ところが、長期にわたる人間社会との依存・共存と、品種改良によって、
犬という動物は、この面が退化しているという現実を分かっておかなければなりません。

 

 

つまり、飼い主が手を貸して、身づくろい、毛をづくろいをして上げなければ、
自ら清潔を維持し、健康な生活がそもそも出来にくい動物という認識が必要なのです。
「動物なんだから放っておいても大丈夫だろ」とはいえないということを、まず認識しておく必要があります。

 

一般的に考えても、シャンプーを含めて被毛(コート)の手入れをしないで清潔感が保てないことが、
飼い犬にとってよい結果につながらないだろうことは、容易に想像できることですが、
トリミングという作業と、その結果そのものが、
その犬の異常や危険を飼い主が察知する、絶好の機会になるという面があります。

 

 

特にいわれるのは皮膚の異常。夏場や梅雨時の、
長い毛の放置は皮膚のトラブルを招きやすく、毛玉の放置も皮膚の炎症につながります。

プロのトリマーもそこは当然注意するところで、
正確な診断や対処は専門家の知見を仰ぐ必要もありますが、
それ以前に、家庭でのトリミングで犬に接することで、
飼い主として異常を察知し、その次の対応につなげることができます。

 

 

また、身体全体についてのノミ、ダニの予防、目や肛門まわりの異常の発見、
足裏肉珠周辺の毛による転倒予防(ケガ、骨折の原因)などにもつながります。

 

 

トリミングがなされないために、前記のような病気などのトラブルが起きる状態が、
犬にとってそもそも快適な状態であるわけがありません。

 

前記した犬の退化した習性を理解しない人のなかには、
｢犬にとっては人にいじられる方がストレスのはず｣といった捉え方をする人もいますが、
犬はストレスを訴えることはできませんし、放置は結果的に犬を苦しめます。

 

 

また、近年、トリミングという行為そのものが、
飼い主・トリマーとのコミニュケーション機会として注目されてきました。

 

これも、「理解できない不慣れなことを強要されるのは犬にとってストレス」といった見方をする人もいるようです。

 

犬の性格にも個体差があり、神経質な犬にはプロのトリマーでもそれなりに苦労する場面があり、
犬にとってのストレスと関連付ける局面がないとはいえませんが、
それもまた、習慣づけの問題が大きいともいえます。

 

 

嫌がったら無理をせず、気持ちのいい行為として理解させ、
リラックスさせることで、飼い主と絆を深める機会になるような、工夫や配慮も必要でしょう。

犬の毛の分類では、ダブルコート(二重毛)とシングルコート(一重毛)というものがあります。

 

ダブルコートはオーバーコート(上毛)とアンダーコート(下毛)の二種類からできており、
柴犬などの短毛の日本犬がそれに当たります。

 

このダブルコートは約半年に一回の換毛期にアンダーコートがごっそりと抜けてしまう、
という特徴があり、抜け落ちないアンダーコートが毛玉になるという注意点があります。

 

 

一方、シングルコートは毛が抜けずに、一生伸び続けるタイプで、
長毛の犬に多く、ダブルコートのように換毛期に毛が抜けない分、
室内を汚さないという飼い主にとってのメリットがありますが、その分より、
定期的なトリミング、日常的なブラッシングやシャンプーが必要になります。

 

 

こうした犬の毛の特性から、トリミングが必要とされる「トリミング犬種」というものが規定されています。

 

国際的愛犬団体のジャパンケネルクラブ(JKC)では、トリミング犬種として、
プードル、コッカー・スパニエル、スコティッシュ・テリア、ミニチュア・シュナウザー、ベトリントン・テリア、ビション・フリーゼ、ワイヤーヘアード・フォックス・テリアなどを挙げており、テリア種が最も多くなっています。

トリミングによって、愛犬におしゃれをさせるのは、
もちろん飼い主にとって大きな楽しみであり、
それも犬に対する飼い主の愛情の表れといえるかもしれません。

 

しかし、前記したトリミングの二つの役割を比べたとき、とぢらが犬のため、
つまり犬本位の役割かといえば、それはいうまでもなく後者です。

 

どんなに愛情のこもったおしゃれであっても、
犬自身にとって(もちろん飼い主にとってもですが)必要に迫られてくるものは、健康に関わることです。

 

 

その意味からも、日常的なトリミングの価値と役割を、ここでもう一度見直してみてはいかがでしょうか。

 

 

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